2016/3/12 名古屋ウィメンズマラソンまであと1日
NAGOYAを彩る女性ランナーたち
F岩出玲亜
(ノーリツ)
五輪代表入りのダークホースか?
失敗した前回名古屋との違いは“落ち着き”

 2日前会見でも野口みずき(シスメックス)や木崎良子(ダイハツ)の名前を出すなどして、機転の利いた受け答えをした岩出だったが、落ち着いたな、という印象を受けたのは東海テレビのインタビュー動画を見たときだった。
「2時間24分台に行きたい。最低でも25分を切りたいですけど、そう思うと力んじゃう。1分でもベスト(2時間27分21秒)を更新するつもりで走れば、自ずと(好結果が)降ってくる。でも甘くないかもしれません。(中略)リオの切符が残っているので、ひっそりと狙いに行きます」
 この落ち着きこそが、岩出に期待できる一番の理由だと森岡芳彦監督も認めている。

 自己記録の2時間27分21秒は、14年11月の横浜国際女子マラソンで出した20歳未満日本人最高記録。短いインターバルになったが、本人が強く希望して前回(15年3月)の名古屋ウィメンズマラソンにも出場した。血液状態やトレーナーの所見などを検討し、森岡芳彦監督も行けると判断したが2時間29分16秒の8位にとどまった。
 結果から判断すると“イケイケ”の部分があり、早川英里(TOTO)と同様に練習で追い込み過ぎたようだ。
 森岡監督は自戒を込めて、次のように反省する。
「岩出は速く走ろうとしていましたね。強くなった基本を忘れて、一足飛びに行こうとしていました。この1年間は海外など色々なところに行き、ナショナル・チームの練習も乗り切った。2014年は井の中の蛙でしたが、2015年は大海を知った、というところでしょうか」

岩出玲亜のマラソン全成績
回数 月日 大会 順位 日本人順位 記 録
1 2,014 11.16 横浜国際女子 3 2 2.27.21.
2 2,015 3.08 名古屋ウィメンズ 8 5 2.29.16.

 トラックと駅伝の成績も明らかに良くなった。日本選手権1万mは6位で32分13秒21の自己新、全日本実業団1万mも5位とダブル入賞をしている。クイーンズ駅伝3区でも区間6位と好走した。
「2014年は1万mで33分かかったり、狙ったところで外したこともありましたが、2015年は全てキチンと走っています。マラソン練習も私が出したメニューを完ぺきにこなした上で、プラスαでこうしたい、と言ってくるようになりました」
 この冬のマラソンからノーリツでも、以前は行わなかった40km走を行うようになっている。選手によってタイム設定も行う頻度も違うが、「30km走でいっぱい、いっぱいだった選手が40km走もできるようになった」という理由だ。岩出の練習への取り組みも、判断材料になったのは想像に難くない。
 これら年間を通じた試合の安定度と、練習への手応えが岩出の落ち着きになって現れている。そして直前の大阪で、堀江が後半で順位を上げて日本人2位に食い込んだことで、「思うところがあったようです」と森岡監督は見ている。

 もちろん森岡監督は、大阪の堀江と同じレース展開をしろ、と言っているわけではない。一歩下がって全体を見渡しての判断も重要になる、ということを岩出が理解できたことがプラスになっている。
「良いところも忘れて欲しくないので、行けるところはガンガン行って欲しい」
 昨年の名古屋でも岩出は、前半は前田彩里(ダイハツ)や伊藤舞(大塚製薬)ら世界陸上代表を狙う選手たちと同じ集団で積極的に走った。今年の名古屋でも同じようにトップ集団を走るが、走りの中身は違った積極性になっているはずだ。


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